病気
糖尿病は老化を加速する!
最終更新 / 2024.09.06
目次
糖が尿に出るだけではありません。
尿に糖が出るのは、身体が必要としている以上の糖分を処理する能力がなくなったため、血液中に糖があふれて、不要な分を尿として出している結果です。通常、食事に含まれる糖分は、インスリンによって筋肉や脂肪などに取り込まれ、生命維持活動を行います。しかし、インスリンが処理できる以上の糖分が入ってくると、取り込めなかった糖分が血液中に残ったままになります。いわゆる血糖値が高くなった状態です。
血糖値が高い状態が長く続くと血液中の糖分を薄めるために、喉が渇く⇒たくさんの水を飲む⇒何度もトイレに行くなどの症状が見られます。また、インスリンが不足すると細胞内にブドウ糖がうまく取り込まれなくなり体重が減少したり、だるさを感じたりします。血糖値が高い状態が持続すると、糖尿病の疑いがあります。
空腹時血糖が低ければいいの?
健診で空腹時血糖値が正常でも、食べる量が多かったり、インスリンの分泌量が少なかったりすると、食後に血糖値が下がり切れていない場合があります。健診では見つからない食後高血糖は、そのまま放置しておくと糖尿病へ進展するリスクがあります。健診で空腹時血糖値:126mg/dl以上、HbA1c:6.5%以上の方は、一度薬局の検体測定室等で食後2時間の血糖値測定をおすすめします。
ポイント
血糖が80mg/dl未満の低血糖や、食後と食前の血糖値の差が60mg/dl以上を指す血糖値スパイクなどの糖代謝異常は慢性疲労症候群や線維筋痛症に潜在していることがわかっています。
放置するとどうなるの?
血糖が高い状態が続くと糖尿病が疑われます。糖尿病と診断される前の血糖値が高い状態を耐糖能異常、糖尿病予備軍と呼ばれています。国内の糖尿病患者数は糖尿病予備軍も含めると約2,000万人(約5人に1人)いると言われ、女性よりも男性に多い傾向があります。
糖尿病には、病態に合わせて種類があります。
1型糖尿病 | インスリンを分泌する器官が破壊される病気によるもの。全体の5% |
2型糖尿病 | 生活習慣病によるもの |
外科的糖尿病 | 手術や炎症などで一時的に血糖値が上がるもの |
妊娠糖尿病 | 妊娠中に始めて発見された糖質代謝異常 |
どれも、全身に悪影響を及ぼします。血糖とタンパクが結び付いたAGEs(終末糖化産物)が血管を傷つけ、微細な毛細血管の機能を低下させることで神経障害、網膜症、腎臓病などを発症します。これらは、足の切断、失明、腎不全に繋がります。糖尿病患者さんのうち、年間1万人以上が足を切断、約3000人が失明、約15000人が腎不全により透析に入られます。耐糖能異常は認知症のリスクも高めます。
メタボリック症候群は、インスリンを十分に働かせるアディポネクチンの分泌が低下します。2型糖尿病の予防第一歩は、内臓脂肪を減少させることです。
糖尿病にはなりたくない!
糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓にムリをさせないことです。膵臓は、消化を促すための消化酵素を分泌します。また、細胞に糖を取り込むインスリンや、糖が足りなくなった時に糖を作りだすグルカゴンというホルモンを分泌します。血糖値を上げるホルモンはいくつかありますが、血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありません。いずれも、摂取する食事の量や内容、時間、回数に関係します。無理な働きをさせないためには、食生活と活動が関係します。
糖尿病の予防には、時間栄養学が有効です。それにはまず、体内時計をリセットすることから始めます。体内時計リズム異常は、肥満や糖尿病と相互に影響しあいます。
本来、人は朝陽とともに目覚め、太陽が出ている間は働き、日が沈むと活動を抑える生活をしていました。今でも私たちのDNAに記憶されています。しかし、生活が便利になり自然との共存が遠くなっている現在、体内時計が狂ってしまっています。体内時計が狂うと、睡眠障害や生活習慣病のリスクが高まるのです。
毎日朝陽を浴びましょう。就寝時間の14~16時間前に約15秒、太陽の光を身体全体で浴びましょう。朝陽を浴びることで、睡眠を促すメラトニンが分泌されます。
そして必ず朝食を摂りましょう。血糖を上げ、インスリンを分泌させることで身体が今から活動することを全身に知らせます。日中はからだを動かし、日が沈んだら活動を抑えることで体内時計はリセットされます。日が沈んだら、強い光を浴びずに照明を落とし、カフェインやたばこ、ブルーライトなど睡眠を阻害するものを避けましょう。
糖尿病予防のためには、食事を摂る時間、内容、回数、量が大事です。
推奨される時間 | 推奨される食物例 | |
朝食 | 朝陽を浴びてから1時間以内 | ご飯、パン、卵料理、チーズ、納豆、牛乳 ウインナーやソーセージ |
昼食 | 太陽が一番上に昇っている時 | 腹八分なら、好きなもの (かといって、ジャンクフードは避けましょう) |
間食 | 昼食と夕食の中間 | ナッツ、シリアル、ドライフルーツ、フルーツ 食物繊維の多い食品 |
夕食 | 遅くても寝る2時間前まで | 緑黄色野菜、魚や鶏肉、牛乳、納豆 炭水化物は少なめに |
炭水化物を先に食べるのと比べて、野菜やタンパク質などの糖質の少ない食事を最初に摂り、10分後に炭水化物(飯、麺、パン)などを食べるベジファーストの方が、血糖の上昇が緩やかになるといわれています。
食事は栄養補給以外にも、楽しさや美味しさによって気分も左右します。我慢ばかりではなく、時々は心が満足する食事も取り入れましょう。
ウォーキングや水泳などの大きな筋肉を使用する有酸素運動や、腕立て伏せやダンベルなどおもりや抵抗負荷のかかるレジスタンス運動を週3回以上行うことが推奨されています。ただし、夕食後の運動は控えましょう。
ポイント
運動と時間栄養学を生活の中に上手く組み入れて、10年後、20年後に向けた取り組みを、今から始めましょう。
・日本内科学会雑誌第105巻第3号 411-416
・国立国際医療研究センター 糖尿病情報センターホームページ