運動
体を動かそう
最終更新 / 2024.09.25
現代社会では、家事や仕事の自動化、交通手段の発達などにより、生活の中で体を動かす時間が少なくなっています。
身体活動・運動の不足は、喫煙、高血圧に次いで第3位の死亡に対する危険因子とされており、身体活動・運動が健康にとって必要不可欠なことが明らかになっています。
体を動かすことで得られる効果についてお話します。
目次
身体活動とは
身体活動とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴うすべての活動と定義されています。
簡単に言うと、人が活動している中で筋肉を使用している動作です。
歩く、立ち上がる、荷物を持ち上げる、などの日常的な動作(生活活動)から、ランニング、筋肉トレ、水泳、その他スポーツなどの運動までの、すべてが身体活動に含まれます。
ポイント
筋肉を使用した体を動かす動作は、すべて身体活動に含まれます。
家事・労働・通勤・通学などの生活の中で生まれる身体活動:生活活動
筋トレやランニング、スポーツなどの計画的に実施する身体活動:運動
身体活動の効果
身体活動量を増やせば消費エネルギーも増加します。
ダイエットしたい人は、身体活動を増やしてエネルギーを消費しましょう。
運動する時間がなくても、生活活動を増やすことを意識すれば身体活動を増やすことができます。
例えば、一駅分歩く、階段を上る、自転車に乗る、掃除機をかける、風呂掃除をする、など生活活動内で体を動かすことを心がけてみましょう。
・肥満症、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、脂質異常症などの代謝性疾患
・高血圧、虚血性心疾患、心不全、脳卒中などの心血管疾患
・関節痛、腰背部痛、骨粗鬆症、サルコペニアなどの運動器疾患
・うつ病、不安、ストレス、認知症などの精神・神経疾患
・大腸がん、子宮体がん、乳がんなどの一部のがん
に対して、発症予防、改善の効果があることがわかっています。
日常生活の中で、気分転換やメンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められています。
運動することにより、セロトニンの分泌が促進されます。
セロトニンは、精神を安定させる働きがあり、不安、イライラ、気分の落ち込みなどの解消や、過食や短気などの衝動的な行動を抑制する効果があります。
セロトニンの分泌増加には、一定のリズムを刻む運動がいいとされています。少し息が上がるくらいの早歩きを10分以上行うと効果的です。
身体活動が少ない人は、睡眠で休息がとれている感覚(睡眠休息感)が低く、健康状態の悪化、生活習慣病の発症、抑うつ、などに影響があることがわかっています
睡眠は、日中の身体活動で消耗した体力の回復の役割があります。
日中の身体活動により、入眠の促進や中途覚醒の減少の効果があり、睡眠の質を高めてくれます。
朝型の生活リズムが作りやすくなり生活習慣が整うと、生活の質の向上にもつながります。
身体活動の単位
身体活動は、強さと量で算出され、「メッツ」という単位で表します。
身体活動の強度の単位です。
座って安静にしている状態を1メッツとして、その何倍に相当するかで表します。
普通の歩行が3メッツに相当します。
3メッツ以上の身体活動は、以下のようなものがあります。
メッツ | 活動内容 |
3.0 | 普通歩行、犬の散歩、電動アシスト付き自転車に乗る、軽くエアロバイクをこぐ、ピラティス、フリスビー |
3.3 | 掃除機をかける、台所での活動(調理・皿洗い・掃除)、庭の手入れをする |
3.5 | 階段の上り下り、風呂掃除、ゴルフ |
3.8 | 体操、早歩き、ほどほどの強度で行う腕立て伏せ・腹筋 |
4.0 | ゆっくり自転車に乗る、卓球、バレーボール、パワーヨガ、ラジオ体操第1 |
4.5 | 耕作、家の修繕、水中歩行、ラジオ体操第2 |
5.0 | スクワット、水中での健康体操、野球 |
5.5 | サンドバッグを叩く、バトミントン |
6.0 | ほどほどの速さで自転車に乗る、パワーリフティング、後ろ向きで歩く、水泳(のんびり泳ぐ) |
6.5 | バスケットボール、軽い荷物を持っての登山 |
7.0 | ジョギング、サッカー、スキー、スケート |
7.3 | エアロビクス、テニス、重い荷物を持っての登山 |
8.0 | ジャンピングジャック、水泳(普通のクロール)、ラグビー |
10.0 | 水泳(速いクロール)、柔道、柔術、キックボクシング |
12.3 | 縄跳び、ランニング(13.8km/時) |
3メッツ以下の身体活動
メッツ | 活動内容 |
1.0 | 睡眠、横になってテレビを観る、瞑想する |
1.3 | 座って静かにテレビを観る、座っての読書や会話、デスクワーク |
1.5 | 座って手をそわそわする、入浴、スポーツ観戦 |
1.8 | 立っての会話、読書 |
2.0 | ゆっくりした歩行、洗濯、楽器の演奏(ピアノ) |
2.3 | ストレッチ、軽いバランストレーニング、ヨガ |
身体活動の量は、強度(メッツ)と実施時間(時)で算出できます。
身体活動量(メッツ・時)=強度(メッツ)×実施時間(時)
例えば、歩行(3メッツ)を30分行った場合、3メッツ×0.5時間=1.5メッツ・時となります。
身体活動量(メッツ・時)に体重(kg)をかけると、消費エネルギーを推定することができます。
消費エネルギー(kcal)=身体活動量(メッツ・時)×体重(kg)
例えば、体重50kgの人が歩行(3メッツ)を30分行った場合の消費エネルギーは、50×3×0.5=75kcalと推定できます。
成人の身体活動量の目安は?
成人では健康づくりのために、身体活動量の目安と運動の目安があります。
身体活動の目安は、強度が3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上行うこと、
運動の目安は、強度が3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上行うこと
が推奨されています。
週23メッツ・時以上の身体活動のためには、1日3~4メッツ・時の身体活動を行うといいでしょう。
3~4メッツ・時/日に相当する身体活動は、
・60分歩く
・8000歩歩く(60分の歩行に相当します)
・30分自転車に乗る(ほどほどの速さで)
などがあります。
運動は、息が弾み汗をかく程度の運動を週4メッツ・時以上行うことが推奨されています。
4メッツ・時に相当する運動は、
・35分ジョギングする
・40分ゆっくりと泳ぐ
・20分縄跳びする
・30分テニスをする
などがあります。
ポイント
体を動かすことは、身体面にも精神面にもいい効果をもたらします。
連続した運動である必要はなく、短い時間の積み重ねでも健康増進効果があります。
週に1回でも健康増進効果がありますので、ライフスタイルに合わせて継続できる身体活動・運動に取り組んでみましょう。
推奨の目安を満たさなくても、今よりも少しでも体を動かすことが健康づくりの第一歩です。
・健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
・習慣的な運動指導プログラム
・健康づくりのための睡眠ガイド2023
・健康づくりのための運動指針2006