栄養・食事

アレルギーを寄せ付けない!

寄せ付けない強固なバリアを!

アレルギー予防対策で重要なことは、ずばりアレルゲンを体内に侵入させないことです。どうやって侵入するのか、いつ侵入するのかをあらかじめ把握しておきましょう。

アレルゲンの侵入経路は?

最も多いのは口や鼻、目など外部に触れやすい部位からの侵入です。前回のコラム「アレルギーで命を落とす危険性」で述べたように、アレルゲンは大きく分けて5種類あります。吸入アレルゲンは鼻から、食物アレルゲンは口から、昆虫アレルゲンは鼻や皮膚から、薬物アレルゲンは口、皮膚、血管から、接触アレルゲンは皮膚から侵入してきます。例外もあり、手に傷がある状態で食物アレルゲンに触ると、そこから侵入してきます。この侵入経路を知っておくと、予めバリアを作っておくことができます。

目が乾燥、充血していたり、肌や鼻の孔が乾燥していたり、肌荒れなどがあると、吸入アレルゲンが鼻以外からも侵入してきます。

ポイント

肌のバリアが壊れていたり、粘膜が乾燥していたりするとアレルゲンが侵入しやすくなります。肌はしっかりと保湿をし、鼻粘膜の乾燥には鼻粘膜用の保湿剤、目の乾燥には目薬などで常に潤った状態にしておくことで、アレルゲンの侵入を減らします。アレルギー予防の基本は第一に潤いです。また、手に傷がある状態でアレルゲンのある食物を触る場合は、手袋などをして予防し、終わった後は手を洗って保湿しましょう。

アレルギーが起こりやすい時期

季節性のアレルギーで最も多いものは花粉症です。2019年の関係学会の調査において、花粉症全体では42.5%、スギ花粉症は38.8%であり、10年間で10%以上増加していると報告しています。

花粉は飛散時期、昆虫は発症時期を把握し、その間はしっかり防御するようにしましょう。

アレルギーは一つじゃない

アレルギーは、一つ一つのモノではなく、それに含まれているアレルゲン(抗原)が引き起こします。例えば、リンゴに含まれるアレルゲンは桃やサクランボ、洋ナシ、シラカンバなどの花粉にも含まれているため、リンゴに対して抗体があるとサクランボやモモなどにもアレルギー反応を示すことがあります。また、花粉症があると、その花粉と同じアレルゲンを持つ食物にもアレルギー反応が出現する場合があります。

花粉症を持つ人が注意したい食品

花粉食物
ハンノキリンゴ、モモ、サクランボ、ナシ、杏、アーモンド、緑豆もやし、
ピーナッツ、大豆、キウイフルーツ、ヘーゼルナッツ など
シラカンバリンゴ、モモ、サクランボ、ナシ、イチゴ、キウイフルーツ、
プラム、メロン、カキ、ブドウ、スイカ、トマト、マンゴー など
スギ・ヒノキトマト、メロン、スイカ、キウイフルーツ など
ブタクサメロン、スイカ、ズッキーニ、キュウリ、バナナ など
ヨモギセロリ、人参、クミン、コリアンダー、フェンネル、マンゴー など

花粉症を持つ人が、同じ抗原を持つ果物を食べた際に起こるアレルギーを、花粉ー食物アレルギー症候群といいます。これは、唇や喉、舌などの口腔内にしびれやイガイガ、腫れなどの症状が出現することから、口腔アレルギー症候群とも呼ばれます。

ラテックス(ゴム)アレルギーを持つ人が注意したい食品

ハイリスクアボカド、クリ、バナナ、キウイフルーツ
リスクありリンゴ、人参、セロリ、メロン、じゃがいも、トマト、イチジク、パパイヤ、
メロン、マンゴー、パイナップル、モモ など

獣肉アレルギーを持つ人が注意したい食品

アレルギー名背景注意する食品
Pork-cat症候群猫にアレルギーあり豚肉、牛肉
α-Gal症候群マダニに咬まれたことがある

アレルギーは一つではなく、組合せで症状が誘発されることがあります。一つでもアレルギーをお持ちであれば、発症しやすいものは何かを把握しておくとよいでしょう。

アレルギー対策をしよう

アレルギー発症の予防には、アレルゲンを侵入させないことです。そのためには、何がアレルゲンであるかを知り、しっかりとバリアを張る必要があります。

吸入・昆虫アレルギー対策

食物アレルギー対策

食品には、アレルギーを引き起こす特定原材料の表示が義務化されているものと任意で表示されるものがあります。必ず確認するようにしましょう。

表示特定原材料等の名称
義務えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生
任意アーモンド、カシューナッツ、マカデミアナッツ、ごま、大豆、
オレンジ、キウイフルーツ、りんご、バナナ、もも、やまいも、
あわび、いか、いくら、さけ、さば、鶏肉、豚肉、牛肉、ゼラチン
消費者庁 食物アレルギー表示に関する情報

このような特定原材料は、そのままではなく加工して使われていることもあります。合わせて原材料名も確認しましょう。

表示例

名称○○
原材料名小麦粉、そばがき、卵白、卵黄、アイスミルク、バター、プロセスチーズ、乳糖、生乳、加糖れん乳、ピーナッツバター、アーモンドオイル、イカ墨、オレンジジュース、ビーフコロッケ、ごま油、大豆油、ブイヨン、がらスープ、ポークウインナー、リンゴ酢、ゼラチン、ブイヨン、マヨネーズ、うどん、ハム、パン、しょうゆ、レシチン、卵殻カルシウム、ホエイ、カゼイン、乳糖、グルテン、デュラムセモリナ・・・など

※これらは全てアレルギーを引き起こす食材です。
添加物等にも含まれている可能性があるため、特定原材料の表示は必ず確認するようにしましょう。

原材料として広範囲で使用されるものは、代替食品を利用しましょう。代替品は栄養素が変わってきますので、不足した栄養素は他で補うようにしましょう。

食品              代替食補いたい栄養素
卵白で固める:寒天、でんぷん、ゼラチン
卵白で膨らます:やまいも、じゃがいも、れんこん、水切り豆腐、
重曹、ベーキングパウダー、すりつぶしたバナナ
アミノ酸(豆、肉、魚)
生乳ココナッツミルク、アーモンドミルク、オーツミルク、
ライスミルク、豆乳
カルシウム
小麦米粉、雑穀、でんぷん特になし

薬物・接触アレルギー対策

初めて使用する化粧品やシャンプーやコンディショナー、染髪剤は染める度にパッチテストをしましょう。

製品方法
外用薬
化粧品
二腕内側やフェイスラインにテスターを塗布し、約30分後に変化が無いか判定する
パーマ液染髪剤原液を二の腕の内側に5×5cm位に直接塗布し、
20~30分後に変化が無いか判定する
湿布剤
テープ剤
小さく切ってそのまま貼付し、テープで固定し、
30分後に判定する

セルフパッチテストは簡易的なものです。皮膚科ではより詳しい検査ができます。また、アレルギーの存在がわかったら、お薬手帳への記載をしておきましょう。

ポイント

アレルギーは事前に知っておけば防げます。早めに検査を受けてアレルゲンを知り、アレルギーが発症しないように対策をしましょう。

参考

・日本アレルギー学会×厚生労働省 アレルギーポータル
・消費者庁 加工食品のアレルギー表示 ハンドブック 令和5年3月
・日本アレルギー学会誌 67(8)、966‐1002.2008