病気
中性脂肪とコレステロール
最終更新 / 2024.09.06
目次
同じ脂質でも、何が違うの?
脂肪分を控えた食事をしているのに、皮下脂肪が多い方がいます。実は、エネルギーとなるものは、体内で使用できなければ中性脂肪となって脂肪細胞に蓄えられるからです。
小腸で吸収された中性脂肪は、カイロミクロン(CM)に変換されて肝臓へ向かいます。カイロミクロンは肝臓へ向かう血液中で分解され、肝臓で取り込まれます。
脂質は水をはじき血液中を移動することができないため、分解されたカイロミクロン(CML)はタンパク質の膜を得てリポ蛋白となります。リポ蛋白は、リン脂質、アポタンパク質、中性脂肪、コレステロールなどで構成され、必要に応じて脂肪とタンパク質の構成比率を変化させます。
健診では、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の結果を知ることができます。それらの関係性と特徴を見てみましょう。
種類 | 密度 | 中性脂肪の割合 | 特徴 |
カイロミクロン | 80~95% | 分解されたカイロミクロンは動脈壁に潜り込めるサイズであり、動脈硬化を起こす要因と言われています。 | |
VLDL | 超低密度 | 55~80% | 分解されたカイロミクロンが肝臓で変化したもの。 筋肉や脂肪組織に中性脂肪を運びます。 |
IDL | 中密度 | 20~50% | VLDLからLDLへ変化する過程のリポ蛋白。 中性脂肪よりもコレステロールの割合が増えます。 |
LDL | 低密度 | 5~15% | VLDLが血管内で変化したもの。 全身の細胞にコレステロールを運びます。 |
HDL | 高密度 | 5~10% | 全身どこでも合成されるもの。 全身の細胞で余ったコレステロールを回収して肝臓に運びます。 |
HDLコレステロール以外のリポ蛋白は動脈硬化を起こしやすいと言われています。
中性脂肪やコレステロールって悪いもの?
脂肪は、からだにとって重要な役割をする反面、多すぎるとからだに悪影響を及ぼします。増えすぎないことが重要で、増える原因、減らす対策を日ごろから意識しましょう。
中性脂肪は、保温、外部緩衝(クッション)、内臓の固定、エネルギーの貯蔵などの役割があります。貯蔵されていたグリコーゲンを使い切ると皮下脂肪や内臓脂肪が分解されてエネルギー源となります。皮下や内臓に着きやすいのはそのためです。
しかし、内臓脂肪が多くなると糖尿病、脂質代謝異常、高血圧のリスクが高まります。
コレステロールは、胆汁酸やホルモンの生成、細胞膜の形成に必要な材料の一つです。HDLコレステロールは他の4種類と違い、組織で使われずに余った脂肪を回収する働きを持ちます。
LDLコレステロールが増えすぎると、血液中の滞在時間が長くなり、酸化してしまいます。酸化したLDLコレステロールは異物として免疫細胞に取り込まれ蓄積されていきます。許容量を超えたら自己崩壊を起こし、血管壁へ沈着して動脈硬化の原因となります。そのため、LDLコレステロールは悪玉、LDLコレステロールを回収するHDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれます。
脂肪の摂取量が少なくても、血液中のブドウ糖濃度が上がると、インスリンがブドウ糖を中性脂肪に変えます。エネルギーが消費されなかった場合も、中性脂肪は蓄積します。摂取した分のエネルギーは、しっかり運動して消費するようにしましょう。
また、アルコールは、中性脂肪に変化するわけではなく、合成を進める酵素を発生します。脂肪分や糖分の高いものと一緒に多量に摂取することで、中性脂肪は格段に増えます。
ポイント
一言で脂質と言っても色々な種類があり、重要な役割も担っています。コレステロールを下げるには中性脂肪の摂取の仕方、運動によるエネルギー消費がカギになってきます。
・糖尿病60(7):485~488、2017 平野勉 日本糖尿病学会誌
・基礎栄養学:田地陽一 羊土社
・看護のためのからだの正常/異常ガイドブック 監修山田幸宏 サイオ出版
・厚生労働省e-ヘルスネット HDLコレステロール