病気

座りすぎで大腸がんに⁉

食事の欧米化だけじゃなかった!

大腸がんの発生は性別によって原因が違いますが、年齢、肥満、摂取エネルギー量、学歴、運動習慣、家族歴がリスク要因となります。これらに男性は飲酒と喫煙、女性は「欧米型」「伝統型」の食生活パターンがリスク要因となることが報告されています。「伝統型」とは、塩蔵魚卵、漬物、魚の干物、味噌汁などを指し、「欧米型」はベーコン、肉類、パン、バター、チーズなどを指します。これらは特に結腸がんと関連しているようです。

また、職業的に座っている時間が長い人は、そうでない人に比べて結腸がんのリスクが1.2倍、TV視聴時間が長い人は1.54倍であったという報告があります。座っている時間が多いとエネルギーの消費量が減るため、体重の増加につながり、TV視聴時間が長いと甘めの飲料、お菓子、ファストフードをながら食いしやすく喫煙量が増加することが原因だと考えられています

良性のポリープががん化する場合があります。大腸ポリープががん化するまでの期間は約10年と言われています。

無視できない腸内細菌

腸内には、約1000種類、100兆個の細菌が存在します。それらは、大きく分けて善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに分類されます。

腸内細菌の中でも最近注目されている菌が歯周病に関連する口腔内の常在細菌である「フソバクテリウム・ヌクレアタム」です。「フソバクテリウム・ヌクレアタム」は大腸がん組織の菌株が同一の可能性が高く、発がんや進行と関連がると考えられています。歯周病の治療をすると、便中の「フソバクテリウム・ヌクレアタム」が減ることがわかりました。

日和見菌は、体調や免疫力に影響を受けて、善玉にも悪玉にも変化します。悪玉菌は欧米型の食事、不規則な生活、ストレス、便秘などが原因で増え、肥満や糖尿病、大腸がんなどに関係しているようです。

善玉菌を増やすには、発酵食品を摂取するだけでなく、菌の栄養となる食物繊維やオリゴ糖を一緒に十分に摂ることが大事です。腸の動きと腸内を整えて、便秘を予防しましょう。

大腸がんは数種類ある

大腸がんは、発生部位によって呼び方が変わります。盲腸~直腸前までを結腸がん、肛門近くのがんを直腸がんと分類されます。

発症部位によって症状や治療法が変わります。

部位特徴的な症状
盲腸貧血 しこりを感じる 右下腹~右側腹の痛み
上行結腸
横行結腸
下行結腸血便、貧血 腹痛、吐き気 お腹の張り 細い便、 便意の変化左側腹の痛み
S状結腸
直腸肛門痛

大腸の役割は、小腸で消化吸収された残りの水分を吸収することです。大腸に入って肛門に至るまでにだんだんと水分が吸収されて固形の便になっていきます。がんになると正常な水分吸収が阻害され、下痢をしたり柔らかい便になったりします。

大腸がんになったら?

日本人では70%がS上結腸と直腸にがんができやすいといわれています。

発見が早かったり、ポリープの段階では大腸カメラで摘出できます。がんが広がっていたり、深い場合は開腹して手術が行われます。

直腸近くで肛門の機能を失う場合は、人工肛門を造設しなければならない場合があります。人工肛門保有者は、国内に20万人を超すといわれています。

大腸がんの治療には、手術だけで平均10日の入院、3割負担で13万~54万円ほどかかります。化学療法を行う場合は、それにプラスした費用と日数がかかります。

大腸がんにならないために

大腸がんは年間約15万人が診断され、30歳を過ぎると罹患率が上がっていきます。大腸がんと診断を受けてから5年間の生存率は約70%で、年間約5万人が死亡しています。

大腸がんは、自覚症状として腹部の張りや便秘・下痢、血便などで気づきます。大腸がんの治療は発見が早いほどからだに負担の少ない治療を受けることができます。ポリープも、がん化しないように早めに切除することも大切です。

大腸がんの検診は、毎年問診と便潜血検査で行われ、対象年齢は40歳以上です。発見率は10000人あたり17人です。便潜血検査は痛みを伴わない容易な検査です。定期的にがん検診と歯周病治療を受けましょう。

参考文献

・国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト
・厚生労働省e-ヘルスネット 腸内細菌と健康