病気

糖尿病は老化を速める病気です。

糖が尿に出るだけではありません。

尿に糖が出るのは、体が必要としている以上の糖分を処理する能力がなくなったため、血液中の糖濃度(血糖値)が上がり、不要な分を尿として出している結果です。通常、食後に血糖値が上がると血液中のブドウ糖を筋肉やしぼうなどに取り込むインスリンが出て、生命維持活動を行います。しかし、インスリンが処理できる以上のブドウ糖が入ってきたりすると、血糖を調整できない状態になります。

血糖値が高い状態が長く続くと、のどが渇く⇒たくさんの水を飲む⇒何度もトイレに行くなどの症状がみられることがあります。また、インスリンが不足すると細胞内にブドウ糖がうまく取り込まれなくなり体重が減少したり、だるさを感じたりします。

糖尿病には、インスリンを分泌する器官が破壊される病気の1型糖尿病(糖尿病全体の5%)、生活習慣が関わる2型糖尿病、手術や炎症などで一時的に血糖があがるその他、妊娠中に始めて発見された糖代謝異常の妊娠糖尿病に大別されます。

空腹時血糖が低ければよい?

健診で空腹時血糖値が正常でも、食べる量が多かったり、インスリンの分泌量が少なかったりすると、食後に血糖値が下がり切れていない場合があります。健診では見つからない食後高血糖は、そのまま放置しておくと糖尿病へ進展するリスクがあります。健診で空腹時血糖値:126mg/dl以上、HbA1c:6.5%以上の方は、一度薬局の検体測定室で食後2時間の血糖値測定をおすすめします。

ポイント

血糖が80mg/dl未満の低血糖や、食後と食前の血糖値の差が60mg/dl以上を指す血糖値スパイクなどの糖代謝異常は慢性疲労症候群や線維筋痛症に潜在していることがわかっています。

放置するとどうなる?

糖尿病は全身に悪影響を及ぼす病気です。血糖とタンパクが結び付いたAGEs(終末糖化産物)が血管を傷つけ、微細な毛細血管の機能を低下させることで神経障害、網膜症、腎臓病などを発症します。これらは足の切断、失明、腎不全につながります。糖尿病患者さんのうち、年間1万人以上が足を切断、約3000人が失明、15000人が腎不全により透析導入されています。耐糖能異常、脂肪肝、飲酒などは認知症のリスクを高めます。

糖尿病は治らないの?

糖尿病と診断される前の血糖値が高い状態を耐糖能異常、糖尿病予備軍と呼ばれています。国内の糖尿病患者数は糖尿病予備軍も含めると約2,000万人(約1/5人)いると言われ、女性よりも男性に多い傾向があります。メタボリック症候群は、インスリンを充分に働かせるアディポネクチンの分泌が低下します。糖尿病の予防第一歩は、内臓脂肪を減少させることです。

糖尿病にならないためには?

糖尿病の予防には、運動と時間栄養学が有効です。体内時計リズム異常は肥満や糖尿病と相互に影響しあいます。体内時計は規則的な食事回数、時間、量、内容によって調整され、肥満を左右します。また、ウォーキングや水泳などの大きな筋肉を使用する有酸素運動や、腕立て伏せやダンベルなどおもりや抵抗負荷のかかるレジスタンス運動を週3回以上行うことが推奨されています。生活の中に上手く組み入れて、10年後、20年後に向けた取り組みを、今から始めましょう。

参考文献

・日本内科学会雑誌第105巻第3号 411-416
・国立国際医療研究センター 糖尿病情報センターホームページ