病気

見た目はスリム、でも血管内は?

体型は関係ない⁉

モデルさんみたいにすらりとしたボディに誰しも一度は憧れたことがあるのではないでしょうか?でも、きれいな血管に憧れて努力する人は見かけません。一般的にはスリム=健康のイメージがありますが、脂質異常症は見た目だけではありません。

肥満とメタボと脂質異常

同じような言葉でも微妙に違い、それぞれに定義があります。肥満や肥満症は体格指数が関係しますが、メタボリック症候群は体格とは関係ありません。

肥満

肥満とは、身長と体重から計算されるBMI(体格指数)が25以上の場合をいいます。しかし、この計算では筋肉隆々で体重が重い人も肥満と診断される場合があります。 体脂肪率では、女性で30%未満、男性では25%未満を目安にしましょう。

肥満には、皮下脂肪型肥満(洋ナシ型肥満)と、内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)に大きく分けられます。

皮下脂肪型

内臓脂肪型

皮下脂肪型は女性に、内臓脂肪型は男性に多く見られます。それぞれ健康へのリスクが異なり、内臓脂肪型は糖尿病、脂質代謝異常、高血圧のリスクが高まります。

BMIを計算しよう!

①身長m × 身長m =A

②体重kg ÷ A  =BMI

BMI判定
18.5未満低体重
18.5~25.0普通体重
25.0以上肥満

肥満症

肥満症は、BMI25 以上で、かつ下表の健康障害のどれか一つ以上、もしくは腹囲が男性85㎝以上、女性90㎝以上の内臓脂肪型肥満症に分類されます。

健康障害
☑ BMI25以上□ 脳梗塞・脳血栓
□ 2型糖尿病□ 脂肪肝
□ 脂質異常症□ 月経異常・不妊
□ 高血圧□ SAS・肥満低換気症候群
□ 高尿酸血症・痛風□ 運動器疾患
□ 心筋梗塞・狭心症□ 肥満関連腎臓病
腹囲
☑ BMI25以上
□ 男性:85cm以上  
□ 女性:90cm以上

メタボリック症候群

メタボリック症候群は、BMIには関係なく内臓脂肪の蓄積と生活習慣病の兆候が組み合わされることで、心臓病や脳卒中などになりやすい病態です。内臓脂肪症候群とも呼ばれます。

腹囲□ 血圧:130/85mmHg以上
☑ 男性:85cm以上
☑ 女性:90cm以上
□ 空腹時血糖:110mg/dl以上
□ 中性脂肪:150mg/dl以上 
かつ/または
HDLコレステロール40mg/dl未満

脂質異常症

脂質異常症は、肥満などの体格に関係なく、血液中の脂質濃度が基準値から外れた状態です。中性脂肪とHDLコレステロールはメタボリック症候群の診断にも用いられます。

血中脂質濃度リスク
LDLコレステロール高い動脈硬化性疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中など)
Non-HDLコレステロール高い血管の詰まり、脂質代謝異常、家族性高脂血症
中性脂肪高い動脈硬化性疾患、膵炎、糖尿病
HDLコレステロール低い動脈硬化が急速に進む、動脈硬化性疾患

ポイント

脂質異常症は、メタボリックシンドロームや肥満症の有無に関わらず、血液中の脂質の値が基準値より高い状態です。

肥満や脂質異常症、何が悪いの?

肥満は内臓脂肪が、脂質異常症は血管への脂質の沈着が病気の引き金となります。
内臓脂肪は皮下脂肪と違い、消化器の周りにつく脂肪です。この脂肪細胞が肥大化すると、動脈硬化を予防するアディポネクチンというホルモンの分泌が減り、動脈硬化を助長するホルモンが増えます。さらに肥満を助長し血栓が作られやすくなり、インスリンの分泌も弱まります。脂質異常症は、血管壁への脂肪沈着によるもので、動脈硬化のリスクが高まります。
BMIでは、筋肉質なのか脂肪過多なのか判断がつかないため、定期的に体脂肪率を測定しましょう。体脂肪率は皮下脂肪を含むため疾患の診断には使用されませんが、食べ過ぎによるカロリー過剰摂取の目安になります。肥満は体重による負荷で関節や背骨などに影響を起こしやすくなり、睡眠時無呼吸症候群が起こる可能性もあります。

アディポネクチンを増やそう

脂肪細胞から分泌されるタンパク質のアディポネクチンはインスリンの働きを正常に戻す作用、動脈硬化を防ぐ作用、心臓を保護する作用などの有益性が報告されています。アディポネクチンが減少すると、糖尿病、高脂血症、動脈硬化が引き起こされるという報告があります。アディポネクチンは運動や食事によって増やせます。まずは、BMI25未満を目指して、体重管理に努めましょう。

からだを動かそう

会話はできる程度に息が上がる有酸素運動が効果的です。毎日30分程度のジョギングやウォーキングは通勤や買い物、散歩を利用して気軽に行えます。休日にはサイクリングやスイミング、ジムなどで短時間で激しい運動と軽い運動を繰り返すインターバルトレーニングもお奨めです。

食事を変えてみよう

オメガ3脂肪酸を含む良質な脂肪と抗酸化物質を多く含む食品、血糖値の安定を目的とした食品に変えてみましょう。間食はできるだけフルーツやナッツなど自然のものを。

サーモン、マグロ、イワシなどの魚類

亜麻仁油やチアシード、くるみ、アーモンドなどのナッツ類

全粒粉入りパン、玄米

ブルーベリー、ラズベリー、緑茶

ポイント

血圧が高くアディポネクチンが高い人は脳血管疾患のリスクが高くなるという報告もあります。高血圧も予防しましょう。

無駄なものを蓄積すると、歳を重ねてから不調が出てきます。見た目だけにとらわれず、定期的に検査を受けることをお勧めします。

参考文献

・日本内科学会雑誌第105巻第9号 脂肪細胞の新たな視点
・日本肥満学会ホームページ:肥満と肥満症
・厚生労働省e-ヘルスネット 脂質異常症、肥満と健康、メタボリックシンドロームの診断基準