栄養・食事
魚の油はいい油!
最終更新 / 2024.10.25
魚の何が体にいいのか、魚を食べると何に効果があるのか、魚のいい栄養素をご紹介します。
目次
体に必要な油を知っている?
脂質、油、脂肪、なんて聞くと、肥満の原因!体に悪い!などのイメージがあるかもしれませんが、
・エネルギーの素になる
・細胞膜の成分になる
・ホルモンの素になる
・ビタミンA・D・E・Kの吸収を補助する
などの役割があります。
ただし、体に悪い!もあながち嘘ではなく、脂質には種類があり、その中で必要な脂質を適度に摂取することが大切になってきます。
脂質は、下図のように分類されます。
脂質は、体内で作れるものと作れないものがあります。
多価不飽和脂肪酸は、人が体内で作り出せない脂肪酸です。
通常の食事では欠乏することはないと言われていますが、欠乏すると皮膚炎を発症するため食べ物から摂取する必要があります。
多価不飽和脂肪酸にはn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸があります。それぞれω-6(オメガ6)脂肪酸やω-3(オメガ3)脂肪酸など言われることもあります。
魚は、n-3系脂肪酸に分類されるDHAとEPAを多く含むため、魚の摂取が推奨されています。
逆に、肉類に多く含まれる飽和脂肪酸は体内で作ることができ、エネルギーを体内に蓄える働きがあるため、肥満や高LDLコレステロール血症の危険因子とされる脂質です。
ポイント
体内で作り出せない多価不飽和脂肪酸は、食事から補いましょう。
n-3系脂肪酸は、魚に含まれるEPA、DHAと、えごま油やアマニ油に含まれるα-リノレン酸があります。
魚の油の効果
魚の油に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は体にどんな効果をもたらしてくれるのでしょうか。
脂肪酸合成酵素を抑制する因子の活性を抑制することで脂肪の合成を抑制し、また脂肪酸分解酵素を抑制する因子を阻害することで脂肪酸分解を促進します。
またアディポネクチンの産生を促し、インスリン抵抗性や脂質代謝異常の改善に働くことで肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の予防に効果があります。
EPAは、中性脂肪を低下させる作用があり抗中性脂肪薬として既に臨床適用されています。食事由来のEPAにも同じ効果があると言えます。
EPAの摂取不足により、肝臓での中性脂肪やコレステロールの合成が亢進され、肝臓に脂肪が蓄積してしまいます。
EPAを摂取することで肝臓への脂肪の蓄積を減少させることでNAFLDの予防に働きます。
EPAやDHAから抗炎症作用を有する代謝物が産生され、炎症を収束してくれる働きがあります。
また、炎症やアレルギー反応と強い関連のあるプロスタグランジンやロイコトリエンなどの生成と拮抗して炎症を抑えます。
食事やストレスにより腸内細菌叢が影響をうけます。腸内細菌は様々な生理活性物質を産生して私たちの体に影響を与えますが、この生理活性物質が様々な疾病に関与していることがわかってきています。
n-3系脂肪酸の摂取によって肥満軽減やインスリン抵抗性の改善に効果があり、さらにEPA自体がプロバイオティクスとして働き、腸内環境を整えてくれます。
n-3系脂肪酸の摂取量が15年後の認知症発症リスクを低下させることがわかっています。
EPAやDHAが神経機能に保護的に働くことによる効果と考えられています。
うつ病患者は、健常者に比べてEPAやDHAが低値であることがわかっており、n-3系脂肪酸による神経伝達物質の調整、抗炎症作用や抗酸化作用などの影響、うつ病や不安症などに効果があることが示唆されています。
魚をどう食べる?
EPA、DHAを効率的に摂取するためには、どのように魚を食べればいいでしょうか。
青魚が体にいい!のは本当で、EPA、DHAを多く含むことから言われています。
青魚は、サバ、まぐろ(トロ)、さんま、いわし、めざし、ぶり、などがあげられます。
青魚以外でも鮭やうなぎ、あゆ、ほっけなどにもEPA、DHAは多く含まれています。
EPAやDHAは、熱に弱い性質があり、火を通すと油が落ちると共に溶けだしてしまいます。EPAやDHAの摂取量を増やしたい場合は、生で食べるのをおすすめします。
生魚が苦手な方は、調理しても油も摂取できるような料理にしてみましょう。
野菜を下に敷いたホイル焼きや、ぶり大根のような煮汁まで食べられるものにすると、落ちた油も摂取することができます。
手軽に食べれる方法として缶詰があります。
さばやいわし、さんま、ツナなど、魚の種類が豊富で、水煮、煮つけ、油漬け、かば焼きなど、味つけも種類があるのでそのまま食べてもよし、ひと手間加えて調理するもよし、多様な食べ方ができます。
普段の食事にかつおぶしやしらす干しをプラスすると、少量ですがEPA、DHAの摂取量を増やすことができます。
納豆に混ぜる、お浸しや冷ややっこにかける、おにぎりの具に混ぜる、など簡単に取り入れられるので試してみましょう。
ポイント
魚を食べる頻度を増やして、EPA、DHAの摂取量を増やしましょう。
肉を食べることが多い人は、魚をたべる日を設けることで飽和脂肪酸の摂取量が減り、より健康効果が得られます。
・厚生労働省 日本人の食事摂取基準2025年版
・市育代.多価不飽和脂肪酸欠乏によって生じる代替的な代謝機構欠乏の観点から脂質栄養の重要性を明らかにする.化学と生物Vol59.No72,2021,p333~338
・雑賀あずさ,國澤純.腸内環境を介して産生される代謝物による免疫・アレルギーの制御.日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 2(4),2022. p141–145
・宮本潤基 木村郁夫.腸内細菌が作り出す生理活性脂質.ファルマシア,Vol59,No1,2023,p15~18