病気

中性脂肪とコレステロール

同じ脂質でも、何が違うの?

脂肪分を控えた食事をしているのに、どうしても肥満体型から脱却できない人がいます。実は、脂肪分だけでなくエネルギーとなる糖やタンパク質も体内で使用できなければ中性脂肪となり、エネルギーとして利用されないと脂肪細胞に蓄えられてしまうからです。

健診では、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の結果を知ることができ

ます。それらの関係と特徴を見てみましょう。

脂肪の分解

食事で摂取された中性脂肪は、小腸で分解されてカイロミクロン(CML)に変換されて肝臓へ取り込まれます。脂質は水をはじき血液中を移動することができないため、分解されたCMLはタンパク質の膜を得てリポ蛋白となります。

リポ蛋白は、リン脂質、アポタンパク質、中性脂肪、コレステロールなどで構成され、必要に応じて脂肪とタンパク質の構成比率を変化させます。

種類密度中性脂肪の割合特徴
カイロミクロン80~95%分解されたカイロミクロンは動脈壁に潜り込めるサイズで、
動脈硬化を起こす要因と言われています。
VLDL超低密度55~80%分解されたカイロミクロンが肝臓で変化したもの。
筋肉や脂肪組織に中性脂肪を運びます。
IDL中密度20~50%VLDLからLDLへ変化する過程のリポ蛋白。
中性脂肪よりもコレステロールの割合が増えます。
LDL低密度5~15%VLDLが血管内で変化したもの。
全身の細胞にコレステロールを運びます。
HDL高密度5~10%全身どこでも合成されるもの。
全身の細胞で余ったコレステロールを回収して
肝臓に運びます。

中性脂肪の役割は?

中性脂肪は、保温、外部緩衝(クッション)、内臓の固定、エネルギーの貯蔵、ビタミンA,D,E,Kなどを吸収する役割があります。脂肪細胞は体内で中性脂肪を貯蔵する場所であり、貯蔵されていたグリコーゲンを使い切ると皮下脂肪や内臓脂肪が分解されてエネルギー源となります。皮下や内臓に着きやすいのはそのためです。しかし、内臓脂肪が多くなると糖尿病、動脈硬化、高血圧のリスクが高まります。食後の血糖値が上がると、インスリンが分泌されますが、血糖値を下げると同時に、脂肪細胞に中性脂肪を取り込んで蓄える作用もあります。そのため、血糖値の上がりすぎは脂肪蓄積を促すことにもなります。

コレステロールの役割は?

コレステロールは、胆汁酸やホルモンの生成、細胞膜の形成に必要な材料の一つです。

LDLコレステロールが増えすぎると、血液中の滞在時間が長くなり、酸化してしまいます。酸化したLDLコレステロールは異物として免疫細胞に取り込まれ蓄積されていきます。許容量を超えたら自己崩壊を起こし、血管壁へ沈着して動脈硬化の原因となります。HDLコレステロールは他の4種類と違い、組織で使われずに余った脂肪を回収する働きを持ちます。

そのため、LDLコレステロールは悪玉、LDLコレステロールを回収するHDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれます。

脂肪分を控えればOK?

脂肪は、からだにとって重要な役割をする反面、多すぎるとからだに悪影響を及ぼします。脂肪の摂取量が少なくても、血液中のブドウ糖濃度が上がると、インスリンがブドウ糖を中性脂肪に変えます。エネルギーが消費されなかった場合も、中性脂肪は蓄積します。摂取した分のエネルギーは、しっかり運動して消費するようにしましょう。

また、アルコールは、中性脂肪に変化するわけではなく、合成を進める酵素を発生します。脂肪分や糖分の高いものと一緒に多量に摂取することで、中性脂肪は格段に増えます。飲酒は節度を持ちましょう。

ポイント

一言で脂質と言っても色々な種類があり、重要な役割も担っています。タバコはHDLコレステロールを下げ、動脈硬化を促進します。

増えすぎないことが重要で、増える原因、減らす対策を日ごろから意識しましょう。

性ホルモンが影響していた!

女性ホルモンのエストロゲンは、悪玉コレステロールの分解を促進し、HDLコレステロールを増やす働きがあります。しかし、閉経によりエストロゲンが急激に減少すると脂質代謝が変化し、特にVLDLやLDLコレステロールの増加、HDLコレステロールの減少が見られることが多くあります。男性はエストロゲンの量がはるかに少ないため、内臓脂肪が増えやすい傾向にあります。また筋肉量を維持するテストステロンは加齢とともに減少し、40代以降では筋肉量減少とともに代謝が低下し脂肪を蓄積しやすくなります。

そのため、男性は40歳以上、女性は閉経後にはエネルギー摂取量を減らして、運動量を増やすなどの対策が必要です。

内臓脂肪が落ちない!

近年、内臓脂肪を落とす機能性乳酸菌食品や飲料などを多く見かけます。また、脂肪燃焼効果のある漢方薬なども出ています。運動量の増加、食事の見直しとともに利用するのもいいでしょう。薬局では、管理栄養士や薬剤師からサプリメントや機能性食品、漢方薬についてもアドバイスがもらえます。気軽に相談してみましょう。

参考文献

・糖尿病60(7):485~488、2017 平野勉 日本糖尿病学会誌
・基礎栄養学:田地陽一 羊土社
・看護のためのからだの正常/異常ガイドブック 監修山田幸宏 サイオ出版
・厚生労働省e-ヘルスネット HDLコレステロール