病気

脂肪肝はFoie gras⁉

ヒトの脂肪肝は笑えない!

脂肪肝の診断を受けたときに「フォアグラができた!」と笑いにするのを耳にします。フォアグラは、鴨やガチョウに、人為的に過剰な餌を与えて肥満にさせて脂肪肝を作ったフランス料理の食材です。脂肪肝はフランス語で“stéatose hépatique”で、フォアグラではありません。自主的に食べ過ぎて肥満になり、肝臓に脂肪を蓄えてしまった状態が脂肪肝なので原理は同じです。

脂肪肝は、必ずしも脂肪の多い食事をしていることが原因ではなく、使われなかった糖質や、蛋白質が分解されてできたアミノ酸が、肝臓で中性脂肪に変化して貯蔵されることでも起こります。

脂肪肝には2種類ある

脂肪肝はアルコール摂取で起こるアルコール性脂肪肝と、アルコール摂取以外で起こる脂肪肝があります。

アルコール性脂肪肝

アルコール性脂肪肝は、常習の飲酒家の約90%に見られ、血清γ-GTPが高値となります。禁酒によって症状や検査値の改善が見られますが、飲酒を継続すると約10~20%がアルコール性肝炎、30~40%がアルコール性繊維症に移行します。

非アルコール性脂肪肝

アルコール摂取以外で起こる脂肪肝をNAFL(ナッフル)、脂肪肝炎を(NASH)といい、それらの総称を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)とよびます。NAFLDの患者さんは全国で1000万人以上いると考えられており、メタボリックシンドロームの患者さんの増加に伴い増えています。

全男性では働き盛りの中年層に、女性は高齢層に多い傾向があると報告されています。NAFLDは肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を伴うことが多いため心筋梗塞や脳卒中で亡くなる場合もあります。

また、アルコール性脂肪肝と比べて病気の進行はほとんどありませんが、10~20%の人は肝硬変への進行や肝癌の発症が見られます。

脂肪肝の症状は?

肝臓は病気が進行しても自覚症状が出にくいため、「沈黙の臓器」と呼ばれています。だるさや疲れ、お腹右上の鈍い痛み、食欲が出ないなどの症状が出てきたら、病気が進んでいる合図です。

健康診断で肝機能の血液検査は35歳以上で実施されますが、20歳を過ぎたら定期的に検査を受けてチェックをしていきましょう。

脂肪肝を予防するには?

肝臓は、血液中の栄養を吸収して、タンパク質の合成や、エネルギー源となる糖の貯蔵、アルコール分解、胆汁の生成など生命維持活動に重要な役割を持っています。しかし、カロリーや糖質、脂質を過剰に摂取すると、脂肪肝に繋がります。

脂肪肝の背景には肥満体型がありますが、隠れ脂肪肝はスリムな人にも見られる場合があります。多くはメタボリックシンドロームが影響しています。食べ過ぎや運動不足、アルコールの摂取が関係しているため、日常生活の見直しが大切です。脂肪肝は、メタボリックシンドロームの予防と肝障害への進行を防ぐことが必要です。

飲酒量を見直そう

アルコール性脂肪肝の予防は、日々の飲酒量を見直すことで予防できます。

1日当たりの最大摂取量は、純エタノールで換算して男性は1日30g、女性は20gです。昨日は飲まなかったから今日は2倍量を、、ということではありません。1日の限度量として活用してください。

少しでも肝臓の負担を軽くするために、節酒・禁酒に努めましょう。

食事を見直そう

肝臓の機能は、日々摂取する栄養素に大きく左右されます。過剰なカロリーや糖質・脂質の過剰摂取は肝臓に余分な負担をかけます。特に、高脂肪・高糖質の食事は、肝臓の脂肪蓄積を促進します。反対に、適切な栄養バランスを意識することで肝臓の負担を軽減し、脂肪の蓄積を防ぐことができます。

例えば野菜や果物にはビタミン、食物繊維、抗酸化物質を多く含み、魚や大豆のタンパク質は肝機能をサポートするため脂肪肝のリスクを低減すると考えられています。

脂肪を燃焼しよう

ウォーキングやアクアサイズ、ストレッチ、軽めのジョギング、エアロバイクなどの中等度の運動を1週間に150分以上 会話はできるくらいの息の上がり方でややきついと感じる位の負荷をかけて行うことが体脂肪を燃やすことに効果的と言われています。 

ポイント

食生活の見直しと運動によって、体格指数(BMI)とウエストの周囲径の管理をしましょう。

肝臓は手遅れになりやすい?

肝臓は炎症やアルコール、生活習慣などの影響を受けやすい臓器ですが、「沈黙の臓器」と呼ばれるように、症状はすぐに現れません。肝臓は、一部を切除しても再生して元に戻りますが、脂肪肝になると再生が遅れたり、異常な形で再生したりすることがあります。脂肪肝は、メタボリックシンドロームの予防と、肝障害への進行を防ぐこと食が必要です。食欲がない、疲れやすい、体がだるいといった症状が出現したときには、肝障害が進行している可能性があるので、定期的に検査を受けましょう。

参考文献

・日本消化器病学会 患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド
・厚生労働省e-ヘルスネット アルコール性肝炎と非アルコール性脂肪性肝炎